観光業のコロナ禍における経営意識調査
⽬次
- 1. 【調査概要】
- 2. 【調査結果概要】
- 1. 81.7%の観光業経営者がコロナ禍で売上が落ちたと回答
- 2. 45%が売り上げの減少に対して「何もすることができない」
- 3. 現在、M&Aを検討しているのは13.3%
- 4. M&Aに興味がある観光業経営者のうち、53.8%がすでに情報収集を開始している
- 5. M&Aに興味がある観光業経営者の相談相手は、「親族・知人」続いて「M&A専門会社」
- 6. M&A専門家の存在は、1割程度の観光業経営者にM&A検討を後押しする
- 7. M&Aに対する不安「マッチングできなさそう」「譲渡先が現れなさそう」など
- 8. 良い譲渡先が見つかった場合、84.6%が事業承継したいと回答
- 9. 株式会社日本M&Aセンター ダイレクトマーケティング1部 部長 コメント
- 9-1. 著者
日本M&Aセンターは、2021年4月に観光業の経営層98名を対象に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う観光業界(ホテル・旅館)の経営実態とM&Aに関する意識調査を実施しました。
意識調査の結果、8割を超える観光業経営者がコロナ禍の影響を受け、売り上げが減少したと回答しました。また、そのうち5割近くが売り上げ改善のために「何もすることができない」と回答。今回のコロナ禍による人の移動の制限や自粛、渡航制限によるインバウンド需要の激減など、影響が直撃した観光業において、事業を継続するための資金繰りに窮する中、自助努力で危機を脱するための施策を実施することが難しく、手立てを打つことができていないことが分かりました。
M&Aを検討している観光業経営者は13.3%という結果となりました。M&Aを選択肢の一つとして考えている観光業経営者は少数で、M&Aは危機脱却の選択肢として観光業の経営者に十分に認知されていないことが分かりました。また、M&Aに対するイメージとして、マッチングや自社の企業価値の評価についての不安が上位に入り、コロナ禍の影響で売り上げが下がる中、譲渡先とのマッチングや企業価値の評価に悪影響を及ぼすのではないかと危惧されていることが分かりました。
一方で、M&Aを検討している観光業経営者のうち、「良い譲渡先が見つかった場合、事業譲渡したい」と84.6%が回答しており、良い譲渡先とのマッチングが他企業とパートナーを組むにあたって重要であると認識されていることが分かりました。
【調査概要】
調査概要:観光業界(ホテル・旅館)の経営実態とM&Aに関する意識調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:2021年4月16日~2021年4月23日
有効回答:観光業(宿泊業、娯楽業、旅行業)の経営層98名
【調査結果概要】
81.7%の観光業経営者がコロナ禍で売上が落ちたと回答
「Q.コロナ禍前(2020年2月以前)と比較し、あなたの会社の現在の経営状態を教えてください」(n=98)と質問したところ、「大幅に売上が減少」が60.3%、「やや売り上げが減少」が21.4%という回答となりました。
・大幅に売上が減少:60.3%
・やや売上が減少:21.4%
・売上は変わらない:12.2%
・やや売上が向上:6.1%
・大幅に売上が向上:0.0%
45%が売り上げの減少に対して「何もすることができない」
「新型コロナ前(2020年2月以前)と比較し、あなたの会社の現在の経営状態を教えてください」の質問で「売上が下がっている」と回答した方に対し「Q.業績改善のために取り組んでいること、または取り組む予定のものを教えてください(複数回答)」(n=80)と質問したところ、「自社HPの作成、リニューアル」が18.8%、「マーケティング・PRの強化(観光場所や旅行の魅力発信)」が15.0%、「新サービスの開発(オンライン観光プランの作成や日帰りプランの作成)」が10.0%という回答となりました。一方で、「何もすることができない」という回答が最も多い45.0%となりました。
・自社HPの作成、リニューアル:18.8%
・マーケティング・PRの強化(観光場所や旅行の魅力発信):15.0%
・新サービスの開発(オンライン観光プランの作成や日帰りプランの作成):10.0%
・経営改善コンサルティングの導入:6.2%
・大手企業との業務提携(M&A):3.8%
・その他:15.0%
・何もすることができない:45.0%
・答えたくない:7.5%
現在、M&Aを検討しているのは13.3%
「Q.あなたは現在M&A(事業承継や事業売却)を考えていますか。」(n=98)と質問したところ、「かなり考えている」が7.2%、「少し考えている」が6.1%という回答となりました。
・かなり考えている:7.2%
・少し考えている:6.1%
・あまり考えていない:21.4%
・全く考えていない:61.2%
・答えたくない:4.1%
M&Aに興味がある観光業経営者のうち、53.8%がすでに情報収集を開始している
「Q.M&A(事業承継や事業売却)を考えていますか。」の質問で「かなり考えている」「少し考えている」と回答した方に対し、「Q.実際に『M&A(事業承継や事業売却)』情報収集を始めていますか。」(n=13)と質問したところ、「始めている」が53.8%、「始めていない」が30.8%という回答となりました。
・始めている:53.8%
・始めていない:30.8%
・答えたくない:15.4%
M&Aに興味がある観光業経営者の相談相手は、「親族・知人」続いて「M&A専門会社」
「M&A(事業承継や事業売却)を考えていますか。」の質問で「かなり考えている」「少し考えている」と回答した方に対し「Q.M&Aを検討する場合、誰に相談しますか。(複数選択)」(n=13)と質問したところ、「親族・知人」が53.8%、「M&A専門会社」が38.5%、「顧問税理士」が30.8%という回答となりました。
・親族・知人:53.8%
・M&A専門会社:38.5%
・顧問税理士:30.8%
・金融機関:23.1%
・公的機関:23.1%
・その他:30.8%
・誰にも相談しない:0.0%
M&A専門家の存在は、1割程度の観光業経営者にM&A検討を後押しする
「M&A(事業承継や事業売却)を考えていますか。」の質問で「あまり考えていない」「全く考えていない」と回答した方に対し「Q.手厚いアフターフォロー」や「多くの選択肢を提案してくれる」、「気軽に相談できる」M&Aの専門家がいれば、M&Aを検討したいと思いますか。」(n=81)と質問したところ、「かなりそう思う」が1.2%、「ややそう思う」が9.9%という回答となりました。
・かなりそう思う:1.2%
・ややそう思う:9.9%
・あまりそう思わない:22.2%
・全くそう思わない:45.7%
・わからない:21.0%
M&Aに対する不安「マッチングできなさそう」「譲渡先が現れなさそう」など
「Q.M&A(事業承継や事業売却)に対する不安や、イメージを教えてください。(複数選択)」(n=98)と質問したところ、「簡単にマッチングできなさそう」が30.6%、「コロナ禍の経営状況では、譲渡先が現れなさそう」が14.3%という回答となりました。
・簡単にマッチングできなさそう:30.6%
・コロナ禍の経営状況では、譲渡先が現れなさそう:14.3%
・自社の価値を適切に理解してくれなさそう:14.3%
・アフターフォローがなく、譲渡後が心配:7.1%
・その他:10.2%
・誰に相談したらいいかわからない:9.2%
・特にない/答えたくない:42.9%
良い譲渡先が見つかった場合、84.6%が事業承継したいと回答
「M&A(事業承継や事業売却)を考えていますか。」の質問で「かなり考えている」「少し考えている」と回答した方に対し、「Q.良い譲渡先が見つかれば、事業承継を積極的に進めたいと思いますか。」(n=13)と質問したところ、「かなりそう思う」が38.4%、「ややそう思う」が46.2%という回答となりました。
・かなりそう思う:38.4%
・ややそう思う:46.2%
・あまりそう思わない:15.4%
・全くそう思わない:0.0%
・わからない:0.0%
株式会社日本M&Aセンター ダイレクトマーケティング1部 部長 コメント
多くの業界がコロナ禍の影響で苦しい経営を続ける中、観光業界は特に厳しい環境での経営を強いられています。地域のランドマークとなるような老舗旅館がコロナ禍による業績悪化のため廃業する事例も少なくなく、それぞれの地域の文化の一部が失われていってしまう事態となっています。
本調査結果でも、8割を超える観光業経営者が売り上げが下がったと回答しており、そのうち半数弱の経営者が「何もすることができない」という結果となりました。この未曾有の危機による厳しい経営環境によって、売り上げが減少し、資金繰りが難しい中、自助努力で新たな取り組みを行うことが難しい傾向があるということが明らかになりました。一方で、M&Aを検討している観光業経営者は13.3%と低い結果となり、M&Aがこの危機を乗り切る施策となることが認知されていないことが分かりました。
日本M&Aセンターは、自助努力での対策が難しい今だからこそ、観光業経営者の皆様にはM&Aを含めたパートナー戦略を選択肢の一つに入れていただきたいと考えています。M&Aによって他企業とのパートナーを組むことで自助努力だけでなく他社と手を取り合ってこの危機を乗り切り、成長を目指していくという選択肢があることを多くの観光業経営者に啓発し、経営のご支援をしていきたいと考えています。
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